フィボナッチ・エクスパンションは、フィボナッチリ・トレースメントと並んでFXでよく利用される相場分析方法です。
しかし、フィボナッチ・リトレースメントと比べると知名度がやや低いため、使ったことのない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、フィボナッチ・エクスパンションの基本的な知識やトレードでの使用方法、やMT4でフィボナッチ・エクスパンションを利用する方法について解説していきます。
フィボナッチ・エクスパンションを使いこなせるようになると、利確ポイントの見極めがしやすくなるので、ぜひ参考にしてください。
Contents
フィボナッチ・エクスパンションについて
フィボナッチ・エクスパンションは、3点の価格を指定し、フィボナッチ数を利用することでその後の値動きを予測していく分析方法です。
トレードにおいて重要なのが、利益確定のポイントです。
エントリーも重要ですが、どれだけの利益になるかを決めるのはあくまでも利食いです。
この利食いについても優位性があります。
フィボナッチ・エクスパンションを使うと優位性のある利食いが出来ますので、有利なトレードが出来ます。
そこで役立つのが、フィボナッチ・エクスパンションです。
まずはそのメカニズムから見ていきましょう。
3つの価格ポイントでラインが決まる
フィボナッチ・エクスパンションは、3つの価格ポイントを指定することで、その後の値動きを予測します。
「トレンドの起点となる安値」「直近の高値」「押し安値」の3点下降トレンドの場合
「トレンドの起点となる高値」「直近の安値」「戻りの高値」の3点
この3点を指定することで、フィボナッチ比率に応じたラインが表示され、そこが利益確定の目安となるのです。
これらの関係性は、下記のようになっています。
基準となるのは、起点から最初の高値や安値です。
ここでの上昇幅や下降幅を「1」として、押し目や戻り目からの値動きを予測します。
最初の値幅と同じだけ動けば「1(100%)」となり、それより小さければ61.8%、大きければ161.8%や261.8%が目標値の目安です。
一般的に目安となるのは、最初の動きで達成された値幅と同じ100%や、その半分の50%になります。
61.8というのはフィボナッチ数ですが、実際にチャートに表示して見ると、このラインで反発しやすい傾向があります。
フィボナッチ数とフィボナッチ比率について
フィボナッチ・エクスパンションの「フィボナッチ」とは、フィボナッチ比率のことを指し、「エクスパンション」には「拡大する」という意味があります。
ここではフィボナッチ比率について解説していきます。(知っている人は飛ばしてください)
フィボナッチ比率は、イタリアの数学者であるレオナルド・フィボナッチが13世紀に発表した「フィボナッチ数列」から導かれる比率です。
フィボナッチ数列は、以下のような数列です。
よくよく見ていくと、2つの数字の合計が次の数字になっています。
具体的には、下記のような計算で求められます。
- 1+1=2
- 1+2=3
- 2+3=5
- 3+5=8
- 5+8=13
- 8+13=21
- 13+21=34
- 21+34=55
- 34+55=89
- 55+89=144
- 89+144=233
数列の任意の値を、その左の数字で割ると面白いことに1.618という数字に収束します。
- 2 ÷ 1=2
- 3 ÷ 2=1.5
- 5 ÷ 3=1.6666…
- 8 ÷ 5=1.6
- 13 ÷ 8=1.625
- 21 ÷ 13=1.6153…
- 34 ÷ 21=1.6190…
- 55 ÷ 34=1.6176…
- 89 ÷ 55=1.6181…
- 144 ÷ 89=1.6179…
- 233 ÷ 144=1.6180…
最初の方は安定していませんが、数列が伸びるほど1.618に収束します。
この「1.618」は「黄金比」とよびます。
同じよう数列中の任意の値を、1つ右の数字で割ると数値は「0.618」に近づきます。
この0.618という数値は「黄金分割」と呼びます。
さらに2つ離れた数字で割った「2.618」と「0.382」、3つ離れた数字で割った「4.236」と「0.236」も「フィボナッチ比率」になります。
これに区切りの良い「0.5」や「1」、0.618の平方根である「0.786」を加えたものが、チャート分析でよく利用されます。
エクスパンションはトレンドの行方を予測する
フィボナッチ・エクスパンションの「エクスパンション」には、「拡張する・拡大する」という意味があります。
つまりはフィボナッチ比率を利用して、相場がどこまで伸びるかを予測していくためのものになります。
フィボナッチ比率は、チャートの中でも頻繁に出現します。
なぜなら価格の値動きも人間が作るものであり、人間の行動もフィボナッチ比率の影響を受けるからです。
相場がどこまで伸びるかを判断するフィボナッチ・エクスパンションでは、伸びて行った先の反発点を予測するため、「1」より大きなフィボナッチ比率を利用します。中でも黄金比である「1.618」は重要な節目となります。
トレンドが発生している時であれば、順張りエントリーは決して難しいものではありません。
しかしどこで利確すれば良いのかは、なかなか難しいものです。
そんな中でフィボナッチ・エクスパンションを利用すると、ポジションを決済するタイミングや、次のエントリー機会がどの辺になりそうかの予測が利用できます。
フィボナッチ・リトレースメントとの違い
一般的に「フィボナッチ」と言うと「フィボナッチ・リトレースメント」が有名ですが、リトレースメントとエクスパンションは非常に対照的で、似て非なるものです。
フィボナッチ・リトレースメントはトレンドの中での逆行を捉え、「押し目」や「戻り」がどこまで行くかを判定します。
一方フィボナッチ・エクスパンションは、トレンドの伸びがどこまで進むかを判定します。
エントリーする時にフィボナッチ・リトレースメントを使い、そこで立てたポジションの決済ポイントをフィボナッチ・エクスパンションで決めるのがベストです。
ただフィボナッチ・リトレースメントの場合、どこの高値や安値を使うかが明快ではなく、人によって判断が分かれる場合があります。
これはトレンドの初期の段階で使うことが多く、チャートが整っていないことが多いからです。
また、押し目や戻り目を狙うということは流れに対する逆張りとなるので、失敗して損切りに遭う確率も低くはありません。
しかしフィボナッチ・エクスパンションは既に含み益が出ている状況での利確ポイント探しですから、利用に伴うリスクはかなり低くなります。
また使う場面は、概ねトレンドの中盤以降になることから、押し目や戻り目も分かりやすく出現していることが多いでしょう。
そのため、フィボナッチ・リトレースメントよりラインを簡単に引きやすいという特徴もあります。
フィボナッチ・エクスパンションの見方と使い方
では実際のチャートにフィボナッチ・エクスパンションを表示させて、値動きとの関係を見ていきましょう。
フィボナッチ・エクスパンションの実例
実際のチャートでいくつか例を見てみましょう。
ここではZigZagを使い、その上をトレースする形でポイントを指定しています。
赤線がZigZagで、青線がフィボナッチ・エクスパンションです。
価格のポイントを指定する基準の部分では、フィボナッチ・エクスパンションの青線が上になっており、ZigZagの赤線を隠した状態になっています。
下図は上昇トレンドで大きく伸びた例です。
フィボナッチ・エクスパンションの「423.6%」が利確ラインとして機能しています。
次は下降トレンドの場合です。
フィボナッチ・エクスパンションの「216.8%」でピタリと反発しています。
利確ポイントとして使えるだけでなく、そこから値が戻った後、再び反発するポイントとしても機能しています。
フィボナッチ・エクスパンションを使うトレード手順
フィボナッチ・エクスパンションを使うトレード手順は以下の通りです。
- トレンドの起点 を確認する
- 押し目や戻り目を確認してエントリーする
- エントリー後、フィボナッチ・エクスパンションを表示
- 各目安のラインで分割決済する
①トレンドの起点 を確認する
フィボナッチ・エクスパンションを使うためにまず必要となるのが、トレンドの起点を見つけることです。
例えば、次のような箇所からトレンドが確認できるでしょう。
- 移動平均線がゴールデンクロスやデッドクロスとなっている
- 高値と安値を切り上げ、もしくは切り下げている
- 大きな陽線や陰線が出て、上昇・下落が続いている
よく分からない場合は、無理してフィボナッチ・エクスパンションを当てはめないようにしてください。
②押し目買いや戻り売りをする
このエントリーについては、フィボナッチ・エクスパンションではなく他の手法でエントリーします。
フィボナッチ・リトレイスメントでタイミングを図るのも良いでしょう。
エントリー後、フィボナッチ・エクスパンションを表示
エントリーしたら、トレンドの起点から押し目や戻りを形成する前の高値や安値をフィボナッチ・エクスパンションで結びます。
フィボナッチ・エクスパンションを表示したら、まずは最初の節目である61.8%に注目します。
もし反発するようなら、自分で引いたフィボナッチ・エクスパンションが効果を発揮していることが分かります。
ならば抜けた場合、次の大きな節目である100%や161.8%、256.8%まで伸びる可能性も大きくなるでしょう。
しかし何の反発もなかった場合は、フィボナッチ・エクスパンションの効き目に懸念が生じます。
あらためてポイントの選び方に問題がなかったかどうか、確認してみましょう。
各目安のラインで分割決済する
利確の基準となるのは、61.8%・100%・161.8%・256.8%などです。
ただ、最初から61.8%を目指すと利幅が薄くなりすぎますので、利確目標は100%以上が推奨です。
問題は、どこまで伸びるか、フィボナッチ・エクスパンション単独では予測が難しいことです。
そこで、各目安のラインでこまめに分割決済すると、実用性が高くなります。
分割は均等にしても良いのですが、161.8%をメインの目標にして、それ以外は比率を下げるという手もあります。
そこまで伸びなかった場合、161.8%のラインに戻ってきた時点で利確をします。
逆張りする方法もある
フィボナッチ・エクスパンションには、トレンド逆張りエントリーの指標としての使い方もあります。
節目となるラインが利確目標になるということは、そこでトレンドが転換するという予測も立つからです。
少なくとも、全面的な転換ではないとしても、一時的な逆行が生じる可能性は高い、という考えです。
そこでラインで反発した場合に限り、トレンドと逆方向にエントリーするという方法が使えます。
ただし、これはトレンド中の逆張りであり、リスクの高い行為です。
そのため損切りの設定も含め、慎重な対応が求められることには注意してください。
フィボナッチ・エクスパンションのMT4での引き方
それではMT4でフィボナッチ・エクスパンションを表示する方法について解説します。
画面上部のメニューバーの「挿入」から、「フィボナッチ」>「エクスパンション」を選択しましょう。
するとチャートにフィボナッチ・エクスパンションを指定するポインタが表示されますので、その状態でトレンドの起点となる部分をクリックし、そのままドラッグ&ドロップで最初の高値や安値へ動かしてください。
するとフィボナッチ・エクスパンションの基準となるラインの前半部分が描画されます。
調整は後からできるので、ひとまず適当で構いません。
次に、3つ目の価格ポイントを指定します。
価格ポイントの3箇所に小さな「□」が表示されているので、一番右側(2つ目の価格ポイント)を選択し、押し目や戻り目に向かってドラッグしてください。
最後に、調整したい部分を選択し、正しい位置に移動させます。
特に押し目や戻り目は、当初は全く違う所に表示されることが多いので、確実に調整しましょう。
選択状態が解除されてしまった場合は、ライン上でダブルクリックしてください。
なお、1つ目と2つ目の価格ポイントの中間ある「□」をドラッグすると、ライン全体を移動できます。
フィボナッチ・エクスパンションを利用したトレード手法
ここではさらに応用的な手法について解説していきます。
- フィボナッチ・エクスパンション同士の重複を利用する
- フィボナッチリトレースメントとの重複を利用する
- レジスタンスラインやトレンドラインなどを組み合わせる
フィボナッチ・エクスパンション同士の重複を利用する
同じように見える値動きでも、時間足を変えてチャートを見ると、違った印象を受けることも多いものです。
特にトレンドでは大きな流れの中での方向性があり、その中で小さな逆行が時おり入る形が多くなります。
そのため時間足が異なれば、描画されるフィボナッチ・エクスパンションも様々なものになるでしょう。
しかし、もしそれらが一致する地点があれば、それは双方の時間足からの根拠が重なることになります。
下図は、30分足(緑)と1時間足(ピンク)でのフィボナッチ・エクスパンションを同時に表示させたものです。
30分足の「4.236」と、1時間足の「2.618」が非常に近くなっています。
つまり、各時間足から見ているトレーダーが共に意識することにより、そのラインの信用性が高まるということです。
フィボナッチエクスパンションとフィボナッチリトレースメントの重複
同じフィボナッチ系の指標を組み合わせる方法もあります。
特に、フィボナッチリトレースメントとは相性が良いことで知られており、組み合わせて使うのがおすすめです。
下図では、フィボナッチリトレースメント(緑線)の「61.8%」と、フィボナッチエクスパンション(青線)の「423.6%」のラインが重なっています。
これは、下落トレンドに対する反発を示す指標と、新しいトレンドの上昇値を示す指標の評価が重なっているということです。
二重の意味で信頼性が高いと考えられるでしょう。
レジスタンスラインやトレンドラインなどを組み合わせる
フィボナッチ系以外の指標との組み合わせも、有効に使いましょう。
フィボナッチ・エクスパンション単独で使うより、信頼性が高まります。
特にトレンドラインは使いやすい指標です。
下図では、上昇トレンドでのレジスタンスライン(緑の線)と、フィボナッチ・エクスパンションのライン(青い線)がピタリと合致しており、ここで反発することが強く予想されるでしょう。
また直近の高値から引いた水平線(緑の線)も、同じくフィボナッチ・エクスパンションの「261.8%」と全く同じ水準になっています。
このように複数のラインが揃った場合、そこで反発する可能性は高いと予測できます。