今回は心理学用語の「アンカリング」について解説します。
アンカリングとは認知バイアスの一種で、先行する数字によって後の数字の判断が歪められることを指します。アンカリングは我々の日常生活からトレードに至るまで色々なところに存在します。
この記事では、アンカリングについて分かりやすく解説し、トレードでアンカリングがどのような悪影響を及ぼすのかについても考察します。ぜひご覧ください。
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アンカリングの例
テレビショッピング
私はテレビショッピングが大好きで、よく見ています。
決して買うことは無いのですが、その売り方を見るのが好きなのです。
きっとあなたもこんな光景を見たことがあるのではないでしょうか?
しかし、今回に限り14,700円で販売します!
というヤツです。
コレは正にアンカリングを使った商品販売の典型です。
最初に高めの価格を提示して、その価格が適正だと思わせておいてから値引きした形で少し安い価格を提示することで、見ている側は「安い!」と感じるわけですね。
安いと感じるのは最初に提示された価格を基準(アンカリング)に考えてしまっているからです。
この販売方法は使い古されたやり方ですが、それでもずっと続いているということは、それだけ効果があるのでしょう。
車のディーラー
あなたが車を購入する際にディーラーと値引き交渉をしていたとします。
ディーラーは車体価格に様々なオプションをつけて400万円を提示しました。
当然あなたは価格が400万円以下になるように交渉を進めるでしょう。
400万円以下になればあなたの「勝ち」なのですから。
しかし、ディーラーは顧客のことをよく理解しています。
先に様々なオプション(不要なものも多い)を勝手に付けて、少し値段が高めの見積書を出すことで、顧客に400万円という価格を頭の中に焼き付けさせるのです。
400万円という価格が頭にある顧客は、価格を下げるために不要なオプションをそぎ落とします。更にディーラーが「○○様だけ特別に10万円値引きさせていただきます」と言って、結果的に370万円になったらどうでしょうか?
400万円が370万円まで下がった!と顧客が喜んで契約するのです。
顧客は最初に提示された400万円がアンカーとなっているので、沢山値切れた気持ちになります。しかし、実はすべてディーラー側の仕掛けた販売戦略の手の上で踊っているだけだったりもするのです。(この例で言えば、350万円で売れれば御の字と考えているかもしれません。)
高値覚えと安値覚え
日常生活にあるアンカリングについてご理解いただけたと思いますので、次はFXにおけるアンカリングについて解説していきます。
FXを含めたトレーディングにおいて一般的に多いアンカリングが、「高値覚えと安値覚え」です。
例えば、あなたが1ドル110円の時にトレードをしていたとします。
その後1ドル100円まで下げてしまいました。
1ドル110円の高値を見ていたあなたにとっては、1ドル100円というのは明らかに安すぎます。これを見れば、「そろそろ底値だろう」「ここまでいき過ぎたのであれば、もう反発してくるに違いない」と思うのではないでしょうか?
そういった割安感から逆張りのロングも入れるも損切りになってしまった・・・・。
このような状態を「高値覚え」と呼びます。
逆に安値を意識しすぎる場合は「安値覚え」と呼びます。
高値覚え・安値覚えは、以前の高値や安値がアンカーとなり、その後のトレードに影響を及ぼすのです。
トレードでアンカリングに陥りやすい人
アンカリングは、自分の手法やルールがまだ確立していない初心者の方に多く見られる心理的バイアスです。
理由は、初心者は「自分はどの様なトレード手法が合っているか?」について理解していないことが多いからです。
そして、自分の手法やルールを確立していない状況で起きやすいのが「ギャンブルトレード」です。運に身を任せて無理なトレードを行うという事ですね。
その様なトレードをしている状況では、なんの根拠もなしに高値・安値を意識しがちです。
もちろん以前の高値・安値というのは、重要な目安となる事に違いはありませんが、自分の手法やルールに従って取引を行う上で重要なポイントとして捉えるものであり、なんの根拠も無しに気にしたところで何の意味もありません。
そのようにならない為にも、しっかりと自分の手法を確立させ、ちゃんとした根拠を持ってトレードしましょう。
トレード手法に潜むアンカリングの罠
アンカリングの餌食になるのは初心者トレーダーだけではありません。
FXの取引に慣れ始めてきた段階であっても、非常に気を付けなければいけないことがあります。
それは、手法を確立させていく段階で知らず知らずのうちにアンカリングの影響によって、手法確立に悪影響を与えてしまうことです。
というのも、手法においてトレーダーがどうしても気にするのが勝率です。
勝率は手法の優位性に直接的に影響を与えませんが、それでも重要視してしまいますよね。
この「勝率」こそアンカリング効果の餌食となってしまうのです。
少し例を出してこの問題点を紹介していきたいと思います。
あなたはこれまでに手法を探していたり、手法について検証している時に勝率を上げようと試行錯誤したことはありませんか?
ブログやツイッター、情報商材のセールスレターを見ると、勝率8割以上の手法がゴロゴロあります。(本当か嘘かは別にして)。
こういった情報を見ていると、「勝率が高ければ高いほど、100%に近いほどFXで勝てる」という誤った考えがアンカーとなってしまうのです。すると、自分の手法も高勝率なものにしたい!と考えて、手法を弄り倒して、聖杯に近づけようとするのです。こういった聖杯探しこそが、人間が潜在的に持っているアンカリングではないでしょうか?
FXでの勝率は大事ですが、それ以上に大事なのは「いかにうまく負けることができるか?」です。勝率にこだわるのではなく「負けトレードの時にいかに損失を抑える事が出来るのか」で、トータルの結果が違ってくるのです。
アンカリングは刷り込みに近い
私個人としては、アンカリングは刷り込みに近いものがあると思います。
刷り込みとは、カモが羽化した時に初めて見た生き物を親と認識する学習現象の1種です。
FXを始める人は、最初は甘い夢を見て相場に参加します。
その過程で、「勝率が80%以上!」といった文言を何度も見ることで、無意識のうちに「高勝率の手法が勝てる」と刷り込みが入り、気づけば聖杯を探す結果になるのではないでしょうか。
あなたのこれまでのトレードについて、どのようなアンカリングがあったか考えてみてください。もしかすると、幻想にとらわれていることに気づくかもしれませんよ。