本記事では平均足スムーズドについて解説します。
以前、平均足について否定的な見解を述べたところ、読者様から大きな反響を頂きました。
今回は平均足やそれらから派生したインジケーターである平均足MAや平均足スムーズドについて更に深掘りしていきます。
結論として私は平均足については否定も肯定もしませんが、平均足スムーズドは不要だと考えています。
平均足はあくまでもローソク足を平均化したものであって、それは相場の流れを大まかに示すものと考えているからです。
SMAやEMAを使った方がよっぽどマシです。
シンプルな方が使い勝手が良いのは言うまでもありません。
それにもかかわらず、平均足スムーズドが神格化されていることに疑問を感じています。
今現在、平均足スムーズド系のインジケーターを何の意味も知らずに「有効だ!」と信じ切っている方は是非読んでください。きっと考え方が変わるはずですので。
Contents
平均足とは?
平均足スムーズドの話を始める前に避けて通れないのがベースとなる平均足です。まずは平均足について基本的な解説から始めさせてください。
平均足はローソク足を平均化して相場の動きを見やすくしたチャート表記方法です。
どのチャートソフトでも表示できますので知っている人はかなり多いと思いますが、その計算式までは知らない人が多いのではないでしょうか。
詳しく見ていくと、実に興味深いですよ。
平均足の計算式
【1日目の計算式】
始値=(前日始値+前日高値+前日安値+前日終値)/4
高値=当日高値
安値=当日安値
終値=(当日始値+当日高値+当日安値+当日安値)/4【2日目以降の計算式】
始値=(前日の平均足の始値+前日の平均足の終値)/2
高値=当日高値
安値=当日安値
終値=(当日始値+当日高値+当日安値+当日終値)÷4
この計算式からまず分かる事は、平均足の高値と安値はローソク足と同じということですね。
ローソク足と平均足を一緒に表示させるとよく分かります。
また、平均足の終値は、ローソク足の4本値の平均値である点も重要です。
平均足の終値が4本値の平均ということは、必ずローソク足上に平均足の終値がある事になります。
そして、始値は前日の平均足の実体部分の平均(真ん中)から始まります。
平均足の始値がローソク足の始値と明らかに違うのはこのためです。その結果、窓は開きません。
以上をまとめるとこのようになります。
- 平均足の高値と安値はローソク足と同じ
- 平均足の実体は、前日の平均足の実体の真ん中から当日のローソク足の4本値(高値安値始値終値)の平均値に向かって伸びる
- 窓は開かない
平均足の陽線が陰線に切り替わるとき
平均足は陽線や陰線が連続しやすい性質を持っています。
平均足が陽線となるか陰線になるかは、ローソク足と同じく、足の始値と終値の大小で決まります。
前項の平均足の計算式を見ると
終値:当日のローソク足の4本値の平均
となっていますので、この2つ大小で陽線か陰線が決まるわけです。
始値は前日の平均足の値を使い、前日の平均足は前々日の値を参照していますから、過去の価格データーを取り入れて平均化されやすくなるため、陽線や陰線が連続しやすくなるわけですね。
陽線や陰線が連続しやすいと、トレンド方向が明確になります。
これが平均足の人気が高い理由です。
平均足の使いどころ
それでは平均足の使いどころについて考えます。
平均足の大きなメリットは、現在の流れが視覚的にわかりやすい点です。
ローソク足とは違って、陽線や陰線が連続しやすいですので、
- 陰線から陽線に切り替わった時
- 陽線から陰線に切り替わった時
がエントリーチャンスになります。
加えて、移動平均線などでトレンド方向を決めておくと、さらに精度を上げることができます。
例えば、下のようにMAよりも平均足が上にある状態で陽線に切り替わったらロング、逆に平均足がMAよりも下にあって陰線に切り替わったらショート、といった感じです。
このようなトレード手法は昔からたくさんありますが、ダマシも非常に多くあります。
例えば下のようにトレンド終盤でエントリーしてしまうと、負けトレードを繰り返す羽目になります。
トレンド終盤のちゃぶついた相場での平均足は、陽線や陰線が切り替わりやすくなります。ここを見送れるスキルがあるかどうかで結果が大きく違うのです。
また、ほかの使い方としては上位足に平均足を表示させて、陽線ならロングだけを狙う、陰線ならショートだけを狙う、といったトレンドフィルターとして使用する戦略もあります。
これもトレンドフォロー型の手法の中で比較的メジャーですね。
平均足の弱点
平均足は視覚的にわかりやすい長所はありますが、良いことばかりではありません。
平均足の弱点として以下の点が挙げられます。
- 精度が低い
- ローソク足のような細かなプライスアクションを認識できない
- 実際のレートとズレが生じる
ローソク足だと把握できる細かなプライスアクションを認識できないのが一番のデメリットです。このような致命的な弱点があるから、私は平均足を利用しませんし、初心者の方にもお勧めしません。
平均足は見やすくてエントリーポイントも探しやすいので人気が高いです。
しかもトレンド相場ではそれなりに利益を出せるので「最強」と呼ばれたりしますが、逆にレンジ相場では使い物になりません。
平均足のMT4インジケーター
平均足から派生したインジケーターが数多く存在する
平均足は日本で発祥したチャート表記方法ですが、海外では「Heikin Ashi」や「HA」と表記されて使用されており、やはり人気が高いです。
そして現在では平均足から派生したインジケーターも数多く存在します。
その中でとくに有名なのが以下の2つです。
- 平均足MA
- 平均足スムーズド
簡単に言えば、平均足を1回平均化したものが平均足MA、平均足を2回平均化したものが平均足スムーズドです。
平均足を再度「平均化」するわけなので、イメージとしてはポテトサラダに使うポテトのようにグチャグチャになっている感じでしょうか・・・。
平均足MA
平均足MAとは
平均足MAとはその名前の通り、平均足をMA化したものです。
具体的には、平均足の始値高値安値終値の4つの値に対して移動平均を求めたものです。
上のチャートでは、平均足MAの中でも一番シンプルな平均足をSMA5化しています。
平均足SMA5を一般的な平均足と一緒に表示させるとこのようになります。
平均足と平均足SMA5は似たような挙動を示しますが、平均足SMA5の方が遅れているのがわかります。また、平均足では陽線や陰線が切り替わりやすい局面であっても、平均足SMA5では切り替わりが少ないことも確認できます。
最後に平均足SMA5とSMA5を一緒に表示させたものが下のチャートです。(ローソク足は消去しています)
これをどう捉えるかは人によるとは思いますが、私にはSMA5も平均足SMA5も同じようにしかみえません。
平均足MAの使い方は平均足と同じく陽線ならロング、陰線ならショートが基本ですが、これはMAが上向いたらロング、下向いたらショートとほぼ同じことになります。
そのため、平均足MAにそれほど優位性はあるのかは疑問が残ります。
移動平均線の種類の数だけ平均足MAがある
前項では平均足MAにいて平均足をSMA化したものを例として解説しました。
しかしMAの種類はSMAだけではないですよね?
EMAやSMMAなどほかにも様々なMAがあります。
それらも平均足MAとして表示できます。
平均足EMA5
平均足SMMA5
平均足DEMA5
平均足SMMA100
などなど、例を挙げればきりがありません。
しかしそれらは全て同じパラメーターの移動平均線と似た挙動を示します。
そうであるならば、わざわざチャートをわかりにくくする平均足MAを表示させる必要性はありません。
平均足MAを表示できるインジケーター
平均足スムーズドとは
平均足スムーズドは平均足MAよりもさらに滑らかな動きを示します。
計算が複雑になっていますので、ローソク足とかなり乖離が生じます。
ここまでくると普通のMAと同じだと思うのは私だけでしょうか?
平均足スムーズドの計算方法
平均足スムーズドの計算式は以下の通りです。
終値MA:終値の移動平均
高値MA:高値の移動平均
安値MA:安値の移動平均
この値から平均足四本値を計算する。
平均足始値:(1本前の平均足始値+1本前の平均足終値)/2
平均足終値:(始値MA+終値MA+高値MA+安値MA)/4
平均足高値:高値MA、平均足始値、平均足終値の最高値
平均足安値:安値MA、平均足始値、平均足終値の最安値
ここまでの計算で、ローソク足の始値、高値、安値、終値の移動平均線から得られたデータから平均足スムーズド用の平均足が算出されます。
そして移動平均線スムーズドは、この平均足を平均足MAと同じように移動平均化させます。
スムーズド始値:平均足始値の移動平均
スムーズド終値:平均足終値の移動平均
スムーズド高値:平均足高値の移動平均
スムーズド安値:平均足安値の移動平均
ちょっとわかりにくいかも知れませんが、流れとしては
- ローソク足の4本値の移動平均線を求める
- 4つの移動平均線から平均足を求める
- 平均足をMA化する
という3つのステップになります。
簡単に言えば、ローソク足のデータを移動平均にして、平均足にして、さらに移動平均化した感じです。
何回平均するの?と思います。
そしてここで忘れてはいけないのが、平均足スムーズドもローソク足の4本値がベースになっていることです。
複数回の平均化でデータが加工されてはいますが、あくまでもデータはローソク足なんですね。
平均足スムーズドの何が凄いの?
「平均足スムーズドが最強」といった文言をたまに見ることがありますが、私にはそれが理解できません。
ここまで読まれた方ならわかってもらえると思いますが、平均足スムーズドも所詮は移動平均線の一種です。
しかも、ローソク足の4本値をゴチャゴチャ加工しただけのものです。
確かにトレンド方向が見えやすくなるのは認めますが、そんなことは移動平均線でもできますよね?
それにも関わらず平均足スムーズドが凄いと思う人は下のチャートを見てください。
平均足スムーズドと、それとほぼ同じように動くラインが表示されています。
このライン、一体何だと思いますか?
5期間の単純移動平均線(SMA5)です。
いろいろと複雑な計算をしてもSMAと大して挙動が違わなかったら使う意味ってあるんでしょうか?
また、平均足スムーズドはパラメーターによって動き方は違います。
最強のパラメーターを探している人もいるようですが、それって徒労に終わると思いますよ。
平均足スムーズドを表示できるインジケーター
その他平均足MAや平均足スムーズドのインジケーターについては、以下のサイトで詳しくまとめられています。
まとめ
今回の記事では平均足や平均足から派生したインジケータについて否定的な内容となってしまいました。
使い方次第な点はありますが、ローソク足よりも優れているとは思えません。
また、平均足スムーズドが一部でもてはやされてはいますが、おそらく計算式等を理解せずに使っているからなのでしょう。ちょっと見た目がかっこいいですが、所詮は移動平均線と大差ありません。
ぜひ覚えておいてほしいのは、平均足もローソク足をベースに計算しているということです。
今後のトレンド方向を示すような別に特別なデータを使っているのではありません。
使う・使わないはあなたの自由ですが、このことを頭に入れて、平均足を使うか使わないかを判断しましょう。
この記事に対するQ&A集
平均足スムーズドは一般の移動平均線と大差なく、複雑な計算にも関わらず特に有利な点がないため、使用する理由がないとされています。
平均足やその派生型は計算過程が複雑でありながら、最終的な表示が通常の移動平均線と似ているため、実用性に乏しいと批判しています。
平均足の方がマシだと思います。平均足スムーズドが使いたいなら、移動平均線を使いましょう。
人によって意見は異なりますが、少なくとも私は最強だとは思いません。そもそもパラメーターによって表示が異なるわけですから、最強たるパラメーターを提示してほしいと思います。