普段チャート分析をする時、当たり前のようにチャートに表示されているローソク足。
世界中のどんなチャートソフトでも当然のように使われるチャート表記方法ですが、実はこのローソク足を考案したのは、江戸時代に活躍した相場師、本間宗久という日本人です。
さらに彼は酒田五法という、世界最古とも呼ばれるチャート分析手法を編み出したことでも知られています。
その効力は、誕生から200年以上たった現在でも通用し、トレーダーであればよく知っている概念にもなっています。
本記事では本間宗久から酒田五法について詳しく解説していきます。
酒田五法とは
酒田五法とは、江戸時代の伝説的な相場師である本間宗久が、米の先物取引を舞台に編み出したとされる世界初のテクニカル分析手法です。
同じく自身が考案したローソク足の組み合わせから、今の相場が売り場なのか買い場なのかを読み解き、莫大な財を成しました。
酒田五法の考案者:本田宗久とは?
本田宗久は江戸時代の中期、徳川吉宗の治世である1724年、山形県酒田市(出羽庄内)で生まれました。
生家は農地を敗戦で手放すまで日本一の大地主であり、「本間様には及びもせぬが、せめてなりたや殿様に」とも称された大豪商、「本間家/新潟屋」です。
宗久は当主である本間久四郎光本の三男として不自由なく育ち、16歳になると江戸で見聞を広めました。
そこで米の先物取引に出会った宗久は、父の引退で財産分与された資金で米相場に手を出し、大成功を収めます。
彼は、酒田の米相場が大坂の米相場と連動していることに気付いていました。
そこで飛脚を使って酒田と大阪の米相場を比較し、当時としてはリアルタイムに近い形で情報を得て、取引に活かしていたのです。
さらに全国の米の生産や需給情報を取得して分析するなど、そもそもはファンダメンタルズ分析も得意としていました。
酒田五法という名前は彼の出生地と、最初に成功し相場師として名を上げた、酒田の米市場から由来します。彼が酒田の大地主だったからという説もありますが、彼は三男で家督は継がず、むしろ兄から放逐されています。
実は成功もつかの間、店の経営方針を巡って兄と対立し、家を出ることになります。
そして再び江戸に上って米相場に挑むも、今度は相場が読み通りに動かず、大失敗に終わります。
その原因を「相場の予測も大事だが、相場を動かす人の心理こそが大事」と悟った宗久は、酒田に戻って座禅修行を積み、やがて大阪に転じて復活を果たすのです。
酒田五法の原型はそこで育まれ、帳簿の記録や分析のために編み出したローソク足から、やがては人の心理を読みとるまでに至りました。
やがて江戸に戻った宗久は過去の失敗の雪辱を果たし、今の価格にして1兆円以上とも言われる利益を稼ぎ出したと言われています。
その名は広く世間に知れ渡り、「出羽の天狗」「酒田照る照る、堂島くもる、江戸の蔵前雨が降る」と謳われるほどでした。
最終的に本間宗久は、一相場師から将軍家の経済指南役もするまでに出世します。
そして1803年に86歳の生涯を全うしました。
「酒田五法」が定着するまで
本間宗久の江戸での大成功を見て、全国の相場師がローソク足やその分析手法に注目しました。
しかしその詳細は門外不出とされ、原書としての「酒田五法」も現存はしていません。
ごく一部の人に伝えられてきた酒田五法の存在が初めて世に出たのは明治28年、「荘内本間宗久翁遺書略伝」という書物が発刊された時でした。
これは宗久が相場の極意を、酒田出身の善兵衛なる者に語った相場論です。
しかしそこに、具体的なチャート分析までは書かれていません。
その後に発刊された書物のタイトルに本間宗久の名前を用いたものが出まわり始め、自然と広まったと考えられます。
そのため、現在世間で言われている酒田五法が、本当に宗久の使っていたものと厳密に全く同じかどうかは誰にもわかりません。
後に西洋で発達したテクニカル分析が輸入されたことで、「西洋で言う○○は酒田五法ではこう呼ばれていた」という比喩も盛んになったようです。しかし、ここでごちゃまぜになった可能性も否定できません。
酒田五法の真髄は形以上に人間心理であり、宗久本人もファンダメンタルズや商品に関係する情報収集に励むなど、ローソク足だけ見れば良いという手法ではないからです。
むしろ西洋式のテクニカル分析と混同せず、組み合わせて互いに補い合う関係が望ましいでしょう。
酒田五法の種類一覧
「五法」と言われるように、酒田五法には5つの基本となる型があります。
- 三山(さんざん)
- 三川(さんせん)
- 三空(さんくう)
- 三兵(さんぺい)
- 三法(さんぽう)
それぞれに買いサインや売りサインを示す多様なサブパターンがあり、細かく分けると20種類〜30種類に及びます。
これらの型を通して、市場で取るべき行動が買いか売りか、あるいは待ちかが判断できるのです。
これら5つについて解説します。
三山(逆三山)
天井圏で相場が上昇と下落を3回ずつ繰り返し、3つの山が連なって見える形を三山と言います。
所謂「トリプルトップ」と同じ形ですが、様々なバリエーションがあります。
三山を理解すると相場の反転を判断しやすく、比較的早い時点で新しいトレンドに乗れるようになります。
三山が出来るメカニズム
三山は、高値の更新に3回挑戦したものの、いずれも失敗に終わったことを示しています。
3つの山の頂点を結んだレジスタンスラインを天井と言いますが、天井を超えるだけの買いの強さがなく、売りに押されている状態です。
ならば、4回目の成功はないだろうという人間心理が働きます。
ですから3つ目の山が形成されて、そこから下降に転じた時が、売りのサイン。
もしくはネックライン(サポートライン)を割った時点も売りポイントになります。
また、底値圏で出現するのが「逆三山」で、下降相場が上昇トレンドに転換する際のサインとなります。
谷が3つ、山が2つの構成で、こちらは三山に相当する場所が買いポイントです。
三山のバリエーション:三尊(逆三尊)
並んだ山の中で中央が一番高い場合、これを三尊(さんぞん)と呼びます。
海外で言う「ヘッド&ショルダー」と同じ形で、相場の天井となるのは中央の山の位置です。
3つ目の山が中央よりも低いことが分かった時点が売りポイントになります。
逆に底値圏で出現するのが「逆三尊」です。
割安感から、買い勢力が優位に立ったと読めるので、絶好の買いチャンスになります。
三川
「三川」には2つの説があり、三山が逆になった形だと言うという説もあれば、3本のローソク足で作られた形だ言うという説もあります。
前者は「三川は三山の反対にして…」という明治以降の書物を引用しているようですが、三川の反対形状は既に逆三山や逆三尊として説明されています。
また「山の反対」を言うなら「谷」がふさわしいでしょう。
実際、三川の説明で「谷に川が流れているイメージ」と書かかれているものもありますが、「逆三尊の谷に3本のローソク足が川のように…」と言う方が自然です。
ただし、三川が「谷」と無関係なわけではありません。
3本のローソク足が特定の形に並んだとしても、それが出現した場所によって意味合いが変わってくるからです。
山も谷もないレンジ相場などで出現しても、三川とは言えないでしょう。
三川のパターン①:明けの明星(宵の明星)
明けの明星(あけのみょうじょう)は、下降相場が底値圏で上昇に転じる際に現れる、買いのサインです。
世界的にも有名なパターンで、英語では「モーニングスター」と呼ばれます。
ローソク足の並びは、長い陰線・コマ(ごく短い実体)・長い陽線という順番です。
コマが陰線か陽線かは問われません。
ポイントは、コマと前後のローソク足の間に窓が空いている点です。
これは大きな変化が起きた後、売買勢が拮抗し、3本目で反動を付けて大逆転した事がわかります。
そして、3本目の陽線の実体が、1本目の陰線の半分以上に達しているかどうかも重要です。
そこを超えて伸びていて、続く4本目もしっかり陽線で終わっているなら、買いのチャンスになります。
そのため実際にFXで使う場合、窓の有無は条件にせず、実体が左右に埋もれていないかなどで判断しましょう。
また、明けの明星の反対版が宵の明星(よいのみょうじょう)です。
英語では「イブニングスター」と呼ばれ、天井圏で上昇相場が下落に切り替わる際に出現します。
構成は、長い陽線・コマ(ごく短い実体)・長い陰線となり、底値圏で出現すると売りのチャンスです。
三川のパターン②:明けの流れ星(宵の流れ星)
明けの流れ星は、明けの明星の変形です。
2本目のコマが陽線であり、かつ長い下ヒゲが付いた場合に成立します。
下ヒゲはそれだけ大きな下降圧が働いたことを示しますが、それをはね返して陽線で足を終えたのが、この形です。
明けの明星以上に反発力が大きかったことを示唆し、よりトレンド転換の確度が高いと判断されます。
宵の流れ星はこの反対で、2本目のコマが陰線で、かつ長い上ヒゲが付いた場合です。
こちらの方が、より「流れ星」感は高いでしょう。
三川のパターン③:明けの十字星(宵の十字星)
明けの十字星も、明けの明星の変形で、2本目のコマが十字線だった場合に成立します。
十字線は究極のコマ足と言え、始値と終値が全く同一だった場合に出現する形です。
売買の力が完全に拮抗していることから、「明けの」シリーズの中で最も完全形とも言えるでしょう。
それだけに出現数は限られ、明星や流れ星以上に見かけることが少ないパターンです。
流れ星での評価と同様、下ヒゲが長いほど良いとされます。
宵の十字星はその反対です。
2本目のローソク足に付いた上ヒゲが長いほど優位性が高く、下降相場に向かうと予想されるので、売りのチャンスになります。
三川のパターン④:両つつみ
明けの明星等と同じく左右に長い陽線や陰線がありますが、種類は同じで、短いローソク足がそこに包まれているパターンです。
両側が長い陽線で、中央が実体の短い陰線である場合は、相場上昇で買いのサイン。
両側が長い陰線で、中央のローソク足が小さな陽線になっている場合は、相場下降で売りのサインになります。
三川のパターン⑤:上放れ二羽鳥
上昇相場で長い陽線が生じ、その上に窓を開けた小さい陰線が横並びで続いた場合、それらの陰線を飛び立った鳥に例え「上放れ二羽(うわばなれにわがらす)鳥」と称します。
開いた窓は、上昇機運の中で、引き続き強い買い勢力の存在を示すものです。
しかし勢いはここで売り手に阻まれ、陰線で足を閉じて、上がり切ることができません。
しかも続く3本目のローソク足も陰線となれば、実際に勢いが止まった可能性が高まります。
ここでは、一部の強い買い勢が価格を強引に引っ張るものの、売り勢がそれを抑えにかかり、逆に下げてしまうほどの強さを見て取れます。
つまり、相場がこのまま上昇していく見方に疑問が生まれ、売りのポイントとなるのです。
三空
隣り合うローソク足の終値と始値に段差ができることを「窓が空く」と言いますが、窓は「空」とも呼ばれます。
三空は「3つ空く」と書くように、窓が3つ、同じ方向に連続して出現したものです。
このパターンが出ると、相場は反転すると見なされます。
必要なローソク足は4本となりますが、ここに陽線と陰線が混在しても問題はなく、あくまで窓が開く方向性が決め手です。
ただしFXでは窓が開くこと自体が珍しく、まして3つ続く場面には、まず遭遇しないでしょう。
そのため、三空は無視して良い(FXでは使えない)という意見もあります。
しかし「窓を開ける位の方向性が生まれている」と捉えれば、考え方の参考にはなるはずです。
いずれにしても窓が3つ連続して出現し、ローソク足も同じ方向に進んでいます。
ここからは、相場に非常に強い方向性が生まれており、一種のパニックに陥っていることが読み取れるでしょう。
実際、三空の発生は突発的な社会的事件や、予想を覆す経済情報などがキッカケになるとされています。
それでもさすがに3連続ともなれば、相場も落ち着きを取り戻し、価格に行き過ぎ感を感じる人も増えるでしょう。
酒田五法には相場の転換を見ながら順張りでエントリーするケースが多いのですが、三空に限っては4本目が閉じたタイミングで逆張りを勧めています。
三空のパターン:三空叩き込み・三空踏み上げ
底値圏で4本連続の陰線が生じ、その間すべてに窓が開く場合、これを「三空叩き込み(さんくうたたきこみ)」と言います。
ここから反転するとされることから、4本目が陰線で終わったのを見届けた時が、逆張りでの買いポイントです。
また、5本目が陽線になって、開いていた窓を埋めるような伸びを見せた場合、相場の反転はいよいよ確実視されます。
三空叩き込みの反対に天井圏で陽線が4本連続し、その全てに窓が開いた形を「三空踏み上げ(さんくうふみあげ)」と言い、逆張りの売りポイントになります。
三空踏み上げが出現するのは、買いが殺到している状態です。
しかし酒田五法では「三空踏み上げには売り向かえ」と檄を飛ばしており、リスクを取ってハイリターンを狙う手になります。
特に下落相場では、売りを「ショート」と言うように上昇よりも足が早いとされるので、タイミングを逃さないことが大事です。
三兵
長い陽線や陰線が続けて3本並んだ状態を三兵と言います。
形としては、ローソク足が階段のように並んでいる状態です。
方向性を持っているという意味では先ほどの三空と同じ性格を持っていますが、三兵ではローソク足の間に窓が出来るという条件がありません。
その代わり、3本が全て陽線、もしくは陰線である必要があります。
この並び自体はそれほど珍しい形ではありません。
窓も開かなくてよいので、三空に比べてFX市場で使える機会が多くなるパターンと言えるでしょう。
また、酒田五法の多くがトレンド転換の発見に役立つのに対し、三兵は今のトレンドがこのまま継続するというサインです。
三兵を知っておくと相場が小さな反転をした際、そのままトレンドが転換するのか、また同じ方向に戻るのかを予測しやすくなります。
三兵のパターン①:赤三兵・黒三兵(三羽烏)
レンジ相場や下落時の安値圏で、陽線が3本連続したものを赤三兵(あかさんぺい)と言います。
赤三兵という名前は、日本では陽線のローソク足を赤で記していたことに由来します。
強い買い気配があることから、上昇の始まりを示すとされ、強い相場に付いていく順張りでの買いチャンスです。
高値圏で出た場合、すでに上がり過ぎている可能性があるので、見送ってください。
特に長めの陰線の後に赤三兵が出て、さらに陰線へと繋がった場合、そこから相場が下がっていくこともあります。
赤三兵の反対版が黒三兵(くろさんぺい)で、高値圏で陰線が3本連続したものです。
相場はすでに天井となっている可能性が高いので、下落していく相場に付いていく、順張りでの売りチャンスとなります。
黒三兵という名前は、日本では陰線のローソク足を黒(墨)で記したことが由来です。
黒い色を烏に例え、三羽烏(さんばがらす)とも言われます。
相場が下落して行く恐怖を、不吉とされる烏に例えたのです。
赤三兵と同じく、本来の場所ではない安値圏での出現は、下がりすぎの可能性を示しているので見送ってください。
特に長めの陽線の後に黒三兵が出て、さらに陽線へと続いた場合、そこから相場が上がっていくこともあります。
三兵のパターン②:赤三兵の先詰まり・黒三兵の先詰まり
赤三兵でも、長めの上ヒゲが付いていたら注意しなくてはなりません。
特に2本目や3本目の陽線に上ヒゲがある場合、赤三兵の意味が変わってしまうのです。
これを「赤三兵先詰まり(あかさんぺいのさきづまり)」と言います。
先詰まりと言うように、そこから下降していく売りサインです。
長い上ヒゲが付くということは、一旦は上がったものの、まだまだ下げたい売り勢力がしぶとく強いことを示します。
そうなると、たとえ陽線が連続していたとしても、信用度は落ちてしまうのです。
赤三兵に先詰まりがあれば、黒三兵にもあるものです。
2本目や3本目の陰線に長い下ヒゲがついている場合、まだ上げの勢力が残っており、十分に下がらない可能性があります。
これが「黒三兵の先詰まり(くろさんぺいのさきづまり)」です。
下がる先行きが止まり、再び上昇基調に戻る予想となるため、買いのサインとなります。
三兵のパターン③:赤三兵思案星・黒三兵思案星
陽線が続いてはいるものの、3本目の陽線が十字やコマになっている場合、赤三兵思案星(あかさんぺいしあんぼし)と言い、体勢不十分と捉えます。
上ヒゲの付いた先詰まり同様、ローソク足が十字やコマということは、そこで伸びの勢いが大きく損なわれているということです。
すでに買いの勢いは衰えており、たとえ底値圏でも、ここから下降していく売りのサインと見なします。
その逆パターンが黒三兵思案星です。
売り圧力が弱く、ここから上がって行く可能性があります。
三兵のパターン④:坊主三羽
坊主三羽(ぼうずさんば)は、三羽烏(黒三兵)の中でも、3本全てに下ヒゲがないパターンを指します。
下ヒゲがないというのは、なし崩し的に価格が下げられ、そのまま足が閉じてしまう状態です。
それだけ売りの圧力が強く、買い手側が抵抗を示せていない様子を示しています。
通常の三羽烏よりもさらに弱気な相場と言えるので、非常に大きな下落をしていく可能性が出てきます。
三兵のパターン⑤:同時三羽
同時三羽(どうじさんば)も三羽烏(黒三兵)の中のパターンで、1本目の終値と2本目の始値、2本目の終値と3本目の始値が同じ形です。
大きな障害もなく順調に下がっていることから、高値圏で出た場合は下げの確度が高まります。
一方、安値圏で出た場合は、上がって行くパターンもあるので注意が必要です。
なお、FXでは基本的に前の時間のローソク足の終値=次のローソク足の始値なので、一般の三羽烏とまとめて同じパターンと捉えて良いでしょう。
三法
「三法」は、相場が止まっているときは静観し、動きが出たらそれに乗るという順張りです。
言わば、ブレイクアウトの見つけ方と言えるでしょう。
相場の一時的な逆行(プルバック)を活用した、押し目買いや戻り売りの判断にも使えます。
名前の由来は諸説あるようですが、現在では「売るべし、買うべし、休むべし」という3つを守るという意味で、三法と名付けられたというのが定説です。
実際、相場の多くは特に明確な方向性を持っておらず、トレンドが生まれても、一時的な戻りやもみ合い相場をはさみながら進みます。
そのため「休む時は休む」ことを重視し、方向性が出たら始めて売り買いに手を付けようというのが、酒田五法の教えです。
三法の特徴
相場の方向性の起点を掴む三法では、合計5本のローソク足が判断材料になります。
まず前提となるのが、相場の動きが止まってレンジ相場となり、三法で言うところの「休むべし」になっていることです。
そこに大陰線か大陽線が現れ、そのあと逆方向に小さな陰線や陽線が3本続きます。
つまり、小さな反転を示すのですが、1本目の始値を超えるほどではありません。
しかし最後に再び逆方向に大陰線か大陽線が伸び、1本目終値を超える勢いになると、三法のパターンが完成します。
形としては「N」字や、逆「N」字になるのが特徴です。
なお間の3本について、株式市場などでは陽線・陰線どちらでも構わないとされますが、FXの場合は全て同じものとなるでしょう。
なぜなら、前のローソク足の終値と次のローソク足の始値は、基本的には飛ばずに連続となるからです。
三法のパターン:上げ三法・下げ三法
上げ三法(あげさんぽう)は、レンジ相場から高値に抜ける時のパターンで、これからさらに上がっていくという買いのサインです。
流れとしては、まず1本目で大陽線が発生し、そのあと3本の短いローソク足が続いて小さく反転します。
ただし1本目の始値を超えるまでには届かず再び反転、前の3本を追い抜く長い陽線が出たら、上げ三法の成立です。
注目するのは、小さな反転でも1本目の底値を割らず、その後の陽線が1本目の上値を超えていること。
売り勢力のポジション整理が進み、相場に上昇感が生まれて右肩上がりになっている構図が見て取れます。
逆に小さな反転が伸びて1本目を下抜けだり、最後の陽線が中途半端で終わってしまうと、上げ三法とは見なされません。
下げ三法(さげさんぽう)は、上げ三法の反対で、レンジ相場の安値を下に抜ける時に出現します。
これからさらに下がっていくので、売りのサインです。
構成は、1本目に大陰線、その後の3本の短い陽線が小さな反転を見せます。
しかし最後に再び大陰線が伸びて行き、1本目の終値を下回ったら下げ三法の完成です。
上げ三法と同じく、小さな反転が1本目の上値を超えることはなく、最後は再び割り込んでしまいます。
買いポジションの整理が進み、相場も右肩下がりになって、下落感が生まれる状態です。
酒田五法を利用したトレード手法
酒田五法は、これまで米相場や株式市場で使われてきました。
その考え方はFXでも通用しますが、そのままでは完全とは言えません。
文中でも「窓」の考え方などを言及しましたが、最後に、酒田五法をより効果的に使うためのトレード手法をいくつか紹介します。
勝率を高めるには長い時間足の方が望ましい
酒田五法はもともと日足の分析から始まった手法ですから、相性が良いのはやはり長い時間足です。
日足や4時間足、あるいは8時間足などで使うのがおすすめと言えます。
さらに長い12時間足や週足も対象となるでしょう。
15分や30分、1時間足などでは、使えないとは言わないまでも有効性が下がる懸念があります。
また1分足や5分足などの非常に短い時間足は、そもそも想定外とも言えるでしょう。
そのため望ましいトレード手法はスイングトレードやデイトレードとなり、スキャルピングには不向きです。
なお酒田五法に限ったことではありませんが、環境分析のため、事前に複数の時間足を確認するようにしましょう。
酒田五法同士を組み合わせる
大きく分けて5種類、小さく分けると20種類以上のパターンがある酒田五法ですが、その真骨頂は複数のパターンを組み合わせて使うことです。
「赤三兵の先詰まり」でレンジ相場になるも、そこから「上げ三法」でブレイクアウトに順張り。
行き着いた天井圏の「三山」で「山川宵の明星」が輝き、そこに「黒三兵」が続いて下落が進む。
など、酒田五法によって相場を連続的に見ることができます。
ただし三法で指摘をしたように、相場の多くは方向性のないレンジ相場です。
そうした場面では無理に酒田五法を当てはめず、休む時は休みましょう。
他のテクニカル分析やインジケーターを併用する
酒田五法はローソク足を使った優れた分析手法ですが、それだけで全てを判断するのは頼りすぎと言えます。
ローソク足は局地的な動きの読み取りには役立ちますが、より大きな流れを掴むには、移動平均線や各種のライン(トレンド・サポート・レジスタンスなど)が不可欠です。
またボリンジャーバンドやRSIなどのインジケーターも役立ちます。
ぜひ酒田五法と合わせて使ってみましょう。