この記事では「サンクコスト(埋没費用)」について解説します。
サンクコストを一言で言えば「もったいない精神」です。
日常生活で「もったいない」と感じでモノを大事に扱うことは大切ですが、実はそのせいで合理的ではない行動をしてしまうことがあります。
特にトレードでは悪影響になりかねませんので、ぜひ知っておいてください。
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サンクコスト(埋没費用)について
サンクコストは心理学用語で、「物を購入するなどの何かしらの行動を取った際に生じたコストによって、その後の行動(意思決定)に影響を及ぼす事」を言います。
これだけだとちょっとわかりにくいので例を出していきます。
サンクコストの例1
あなたがトレード用のパソコンを10万円で購入しました。
補償期間の1年を過ぎたある日、突然パソコンが動かなくなってしまいました。
急いでパソコンを購入した店に持っていき、修理代金として2万円支払いました。
それからしばらくは問題なくそのパソコンは使えていましたが、再び調子が悪くなり、モニターに何も表示されなくなりました。
そこで再度パソコンをお店に持っていくと、修理に6万円必要だと言われました。
この場合、あなたはどうしますか?
最初の修理で2万円支払い、今回の修理で6万円、合計で8万円を修理代に費やすことになります。
もし、最初の修理の時に8万円を請求されていたら、ほとんどの人が少しプラスして新品を買うはずです。これが一番合理的な考えになります。
しかし、1回目で2万円支払って修理した場合、2回目で6万円を請求されても「修理して使ってきたから・・・」と考えてしまって、新品を買わずに修理してしまうのです。
これがサンクコスト効果です。
サンクコストの例2
とある会社が新商品の開発をしていました。
かなり大掛かりなプロジェクトで、それなりにお金をかけて開発は進んだのですが、途中で頓挫してしまいました。しかも、時間がかかりすぎたせいもあって、そのプロジェクト自体が少し時代遅れになっています。
しかし、社長はそれまでかけた時間と金銭的なコストもあって、何とかプロジェクトを継続させようとしています。
本当なら、現在に即した形でプロジェクトを一新したほうがコストは少なく、早くできる上に、多くの利益が見込めるかもしれないのに・・・・。
つまり、社長はそれまでのコストに足を引っ張られて、合理的な判断が出来な状況になっているわけです。
これも一つのサンクコストの例になります。
サンクコストの例3
とある専業トレーダーは10年以上連続して年間プラスとなっていることが自慢です。
しかし、最近では年間プラスと言っても年間の獲得pipsが100pips未満と非常に寂しい状況です。おかげで収入よりも支出の方が多く、生活に困ることが多くなりました。
そんなトレーダーがトレードの参考にしているのがファンダメンタルズ。
ファンダメンタルズを猛勉強して、ファンダメンタルズを取り入れるようになって勝てるようになった経緯があるため、ファンダメンタルズ無しのトレードなんて「あり得ない」といいいます。
しかし、現実問題として年間に100pips以上取れる手法、つまりそのトレーダーがー現在使用しているファンダメンタルズをベースとした手法なんかより優れたテクニカル手法が多くあるのも事実です。
それを知っていたとしても、ファンダメンタルズを使った手法から離れられない。
ファンダメンタルズよりもテクニカルの方がより客観的に相場を見ることができるのにそれを取り入れようとはしない。
これもサンクコストの例です。
実際のFX取引でのサンクコストの例
それでは、トレード中のサンクコストの例についてご紹介します。
現在は下降トレンド中。
そろそろ反発しそうなので、逆張りでロングポジションを取りました。
ここから大きく反発上昇すれば、かなり大きな利益が見込めるのです!
しかし、思いとは逆に相場は下落していきます。
通常なら予測と違う動きをすれば損切りして仕切りなおすべきなのですが、この時は自分の判断を頑なに信じて「今が底!」とナンピンを入れていきました。
この時点で、最初のロングポジションを「助けたい」という思いがサンクコストのトリガーを引いたことが明確ですよね。
しかし相場は無慈悲なもの。
さらに下落をしたため、「できればプラスマイナスゼロで決済したい」という思いで、ポジションの平均値を下げるために再度ポジションをとりました。
しかし、さらに下落は続き、含み損が雪だるま式に増えて、口座が吹っ飛んでしまいました。
本当であれば、最初の段階でロングポジションを損切りして、考えを変えてショートポジションを取っていれば利益になっていたはずなのに・・・・。
このような経験を多くの人がしていると思いますが、実はサンクコストによる影響なんですね。
ナンピンを繰り返し含み損を膨らませたトレーダーは、ポジションを切りたい気持ちはあります。
しかし、それまでに投資したコスト(金と時間)が無駄になってしまうので、ポジションをズバッときって、新たにエントリーすることが心理的に難しくなります。
サンクコスト効果の怖いところは、先に投資したコスト(金と時間)が大きければ大きいほど、心理的効果が増幅される点にあります。
ナンピンした回数やロット、これまでにかかった時間が多いほど、そのポジションを切ることが難しくなるのです。
サンクコストから逃げるには?
繰り返しになりますが、サンクコストとは過去の行動によって現在の行動が影響を受けることです。
自分自身でも合理的ではないとわかっていながらも、どうしても行動を変えることが難しいのがサンクコストの真理です。
それではトレードにおけるサンクコストを避けるためにはどうしたらいいでしょうか?
私が提案できることとと言えば、少なくともトレードごとに最大損失額を決めておくことが一番です。1回のトレードで資金の1%のリスクしかとらないと決めたら、それ以上マイナスになったらすぐに切る。これをやるだけでいいのです。
下手にナンピンを打とうとすれば、その分だけサンクコストが強くなって離れられなくなります。
トレードが終わったらサッと頭を切り替える。
これだけでサンクコストからの呪縛から離れられることができるのです。